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| '07.3 勝どき SIGMA ZOOM 28-105/2.8-4.0 |
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ちょうど1年ぶりに、また晴海に来た。
翌日、朝から辰巳に行く予定があったので、土曜の夜は近くのホテルを予約し、土曜日はウォーターフロントを歩くことにした。
晴海は地下鉄でのアプローチが悪く、大江戸線の勝どきで降りて歩くしかない。
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ウォーターフロントらしい運河の風景。
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運河をバックに咲く梅の花を撮影していると、付近の工事現場から休憩に来た年配の男二人が心筋梗塞の話をしていた。
つい、聞き入ってしまった。
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少しだけ張りを失った花のほうに色気を感じる。
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ここには、今高層マンションが建設中である。そして、朝潮運河を隔てた晴海側も工事中である。ウォーターフロントは常に工事中である。
埃っぽく殺風景な中を工事車両が行きかい、クレーンが建材を運ぶ。永遠に完成しない街。それが東京の水辺か。
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1年前は、ほっとプラザまでしか来なかったが、次は晴海客船ターミナルまで行こうと思った。
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晴海は本当に不思議な空間である。広大な空き地に「東京オリンピックスタジアム予定地」などと書いてあったり。
一見して何をやっているのか分からない不思議な技能検定の会場になっていたり。
路肩には、観光バスが止まっていたり、タクシーを止めて運ちゃんが寝ていたりする。
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日野啓三の「夢の島」という小説に、晴海の不思議空間が描写されているシーンがある。
スタディアムのような大きな建物の入口に、催物ならば看板のようなものが出ていると思ったのに、看板も横幕もなく、受付らしいものも見えない。
子どもたちはぞろぞろと中にはいってゆく。（中略）
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様々な仮装姿でたくさんの子供たちが通路を歩きまわっている。テレビの怪物から、宇宙人、動物、いろんなお伽噺や神話の主人公や王女、ナチの軍服ヘルメット姿から中国の人民解放軍まであった。
自動小銃を構えた軍服姿の少女も、お姫様になった少年もいる。その仮装と変装のどれもが丹念に手をかけてあった。その誰もが至極真剣な表情で、少しも照れもふざけもしないで、自分の想像の世界を漂うようにさまよっている。
彼というおとながまぎれこんでいることなど、誰ひとり気にかけもしない。
異様な光景だったが、不健全という気が全くしなかった。こういう場所を探し出して、この子供たちは自分たちの夢の姿を生きているのだろう。（中略）
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自分でもよくわからぬ心のたかぶりのまま、昭三はそっと会場を出た。少し先に島の突端にある公園が見えた。何台かトラックが駐車している他はがらんとした埠頭の荷物置場を横切って、
昭三は歩いていった。
（日野啓三 「夢の島」より）
この小説は、昭和60年に刊行されているから、今とはずいぶん違う晴海であったと思われる。国際見本市があったころであろうか。しかし、それでも何か現実離れをしたような空間は今も変わらないものを感じる。
この日も、晴海客船ターミナルでアニメキャラのコスプレ集会が行われていた。このようなシーンに出くわすのは初めてだったが、彼らはお互いに写真を撮りあっている。それを仲間同士で売り買いするのだろうか。
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晴海埠頭から遠くお台場を望む。
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同じく、日野啓三の「夢の島」からの一節。
晴海埠頭の先端から東京は最も美しく見える、と昭三は思っている。ニューヨーク湾から眺めたマンハッタンのように。東京湾のいつも青黒くうねっている水面の向こうに、
東京タワーを真中にして高層ビルだけが重なり合って見えるのである。何度かひとりでそこに行って、暗くなるまで東京の影絵を眺めた。来る度にふえているビル、高く積み重なってゆく東京の眺めに、元気づけられてもきた。
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